2015年2月18日水曜日

ライズがドライフライとは限らない!?

雨のように水面に広がるライズ!
そのライズリングに向かって、何度ドライフライをキャストしても全く反応なし・・・。
ライズがあるのだから確実に魚はいるし、エサも食べている。
ところがフライボックスのドライフライは全て試したのにことごとく無視されて・・・。
きっと誰もがそんな経験あるはずです。


ライズとドライフライの関係は、すでにこのハウツーの中の「ライズフィッシングとドライフライの選び方」の中で基本を記しました。

また、フライの対象となる水生昆虫の各ステージ(成長段階)については「水生昆虫のライフサイクルをイメージしよう」の中で説明しています。

以上を踏まえた上で一通りフライフィッシングを経験したビギナーの方は、ライズがあるとき/ライズが起きそうなときはドライフライ、ライズが無いときはニンフ・・・という漠然としたイメージを持っているかもしれません。
これはあながち間違いではないのですが、このイメージに固執してしまうと冒頭のような「ライズはあるのにドライフライに反応しない」状況に対しては成す術がなく途方にくれてしまいます。

それではこのドライフライを無視するライズの主を相手にするにはどうしたらよいでしょうか?
まずキャストする手を休めて、もう一度そのライズを良く観察しましょう。
  • ライズの周辺に水生昆虫は飛んでいますか?
  • ライズ周辺の水面に水生昆虫は浮かんで(または流されて)いますか?
  • そのライズは本当に水面の昆虫を捕食していますか?
ライズは確かに水面上に確認できているとしても、ひょっとしたら捕食行為そのものは水面下で行われているのかもしれません。

もう一度「水生昆虫のライフサイクルをイメージしよう」を改めて思い出してください。
メイフライ(カゲロウ)は幼虫(ニンフ)時代を水底の石の裏で過ごし、成虫になるために水面へ浮かんできて(イマージャー)、最初の脱皮でダン(亜成虫)となり、もう一度脱皮をしてスピナー(成虫)へと羽化します。
カディス(トビゲラ)は幼虫時代(ラーバ)をメイフライ同様に石の裏などで過ごします。その後サナギ(ピューパ)となり水面へ浮上し脱皮をします(イマージング・ピューパ)。

そして一般的なドライフライがイミテートしているのは、「メイフライ・ダン」と「メイフライ・スピナー」、さらに「カディス・アダルト(成虫)」です。
水面に浮かぶフライなのですから当然ですよね。

しかしもう一つ忘れてはいけないのが・・・、そう「イマージャー」です。
成虫へと羽化するために水中を泳いで水面へ向かい、脱皮するプロセスをイメージしてみてください。
成虫になり空中を飛び回るメイフライやカディスにジャンプして食いついたり、水面に落ちる個体を待つよりも、羽化のために水中を泳いで水面へ向かう状態、水面や水面直下で羽化の準備をしている昆虫の方が、魚にとっては食べやすい状態だとは思いませんか?
しかもその食べやすいイマージャーが水面下をたくさん流下しているとしたら?

そうなんです!
実はライズというトラウトの捕食行動は多くの場合、水面直下の虫を食べているわけです。

もちろんこの水面直下のイマージャー状態の昆虫を捕食しているトラウトがドライフライにライズすることもあるでしょう。
これはメイフライならイマージャーからダン(亜成虫)になり水面を流れている間に捕食の対象となるということを意味しています。

さて、それでは今回のテーマ「ライズはあるのに水面を流れるドライフライは無視されている」とき、どんなアプローチがあるのでしょうか。
もう想像はつきますよね。
水面直下を流れている/流されているイマージャーを演出すれば良いのですから、メイフライ・ニンフのパターン(フェザントテイル・ニンフなど)やカディス・ピューパのパターン、ユスリカならユスリカ・ピューパをプレゼンテーションすれば良いということになります。
もちろんイマージングステージそのもの(脱皮しつつある状態)を模したフライもありますから、そういったパターンも良いでしょう。
水面下を流すための適当なフライがない場合、少々乱暴ですがパラシュートフライのポストやスタンダードタイプのハックルををカットしてしまうことも方法の一つです。

水面直下を探るイマージャー・パターン。
ニンフのボディにウィングを持つ形状は、正に羽化しつつある状態を表しています。

ライズするトラウトと言えども水面下を流すことが有効な場合があることは分かりました。
では具体的に水面直下の範囲をどうやってフライを流したらよいでしょうか?

一つはウェットフライの方法です。
状況に応じてナチュラルドリフトさせたり、ダウン・ストリームで下流へ流し込んだり、或いはウェットフライの基本となるダウン・アンド・アクロス(「簡単オイカワ・ニンフィング!」にその基本を紹介しました)で広く探ったり。。
この時、ストライクは水面を流れるリーダーやラインの動きの変化で判断するのですが、案外きちんと手元にも明確な当たりが伝わってきます。

水面下のイマージャーを捕食していたと思われるライズを
フェザントテイル・スパイダー(ウェットフライの一種)で攻略!

また、「ルースニング」の釣り方を既に実践しているなら、その手段を応用することが考えられますね。
ノンウェイトで巻かれた(フライのボディ内にオモリが巻き込まれていない)フライや、ライトウェイテッドのニンフフライを長めのティペットで漂うように流します。
できればフライ先行で後からストライク・インジケーターが流れるようにすればはっきりと当りがでると思います。

ちなみにニンフやウェットフライを使う際、ビギナーの方ほどやたらと深く沈めようと考える傾向があるようですが、すでに繰り返しているようにトラウトの捕食対象としてもっとも多いのは、石の下に隠れている幼虫や空中を飛び回る成虫ではなく、水面付近で羽化段階にあるイマージャーだと考えられます。
その意味ではフライを深く沈める必要はありません。
基本は水面直下から浅い層を流すことにあります。

一方でライズとは異なりますが、堰堤下や深い落ち込みを探る際はヘビーウェイテッドのフライで底付近まで沈める必要もあります。
この場合、落ち込みなどの複雑で強い流れによって隠れている水底から引きはがされて流されるニンフを模しているからに他なりません。

ポイントや魚のコンディション、ライズの有無によって選択するフライや流し方が異なります。
今、目の前で起きている状況をよく観察し、それぞれの戦略を立ててフライフィッシングを楽しんでください。

フライフィッシングが他の方法に比べて優れているのか、たくさん釣れるのか、そんなことは全く分かりませんし、考えたこともありません。
しかし環境に応じた多様さと言う側面においてはフライフィッシングが間違いなく最も多くの可能性を持っているのではないでしょうか。
トラウトのライズがあろうが無かろうが、川虫(ニンフ)を食べていようが水面のカゲロウ(成虫)を食べていようが、ミミズやイクラやスプーンなどのルアー、或いは特定の対象を持たない(と言われる)テンカラ毛鉤ならいつでも釣れるのかも知れません。

しかし自然を観察して、想像し、その時々に合ったアプローチの多様さを実践するようになったとき、フライフィッシングの途方もない奥深さ・面白さにもっともっと引き込まれていくのではないでしょうか。


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